2025年の展望

新しい年を迎え、今年の展望をお伝えします。
基本的には去年までやってきたことを続けたいと思います。

古民家での診療
月・火・水が渋川市での保険診療なので、木・金・土・日に畑作業や薪仕事の合間にやってます。渋川市での保険診療はとても混雑していますが、高山村まで自由診療を求めて来る人はそれほど多くはありません。それでも群馬県内ばかりでなく、東京や首都圏からも車でいらっしゃいます。遠くは名古屋から休暇を兼ねて来られた家族もいました。冬の間は冬用タイヤが必須です。
転地療法と言いますが、いらっしゃる方々は高山村古民家の空気に触れるだけで気持ちが落ち着くと言われます。

大森での診療
毎月3日間(金・土・日)の診療を、私が移住するまで住んでいた大田区大森の自宅で行います。東京の患者さん達が落ち着いたらおしまいにしようと思っていたのですが、やはり東京のニーズは高く新患がよく入ります。もうしばらくは二拠点生活を続けます。

オンライン診療
Zoomや電話によるオンライン診療のニーズも高まっています。初回はオンラインで行い、次からは高山村や大森での診療に移行する方もいます。診察室に来る方と自宅からオンラインで参加する家族とを繋ぐハイブリッド面談も行います。

家族ミーティング
毎月1回土曜日の午後に高山村で行います。オンライン参加も可能です。誰でも自由に家族のことを話し合う会です。子どものこと、親のこと、夫婦のこと、、、何でも構いません。ひとりで参加する方が多いですが、親子や夫婦で参加する方もいます。自分は語らず、私と参加者の話を聞いている方や、話すつもりはなかったけどほかの人の話につられてお話しされる方などいろいろです。

スーパーヴィジョン
日本語では臨床指導のことです。支援者の実力を高める目的で、関わった事例についてどう理解したらよいか、どう支援できるかなどについて話し合います。
個人スーパーヴィジョンはスーパーヴァイザーとの一対一の対話です。高山村、大森、オンラインで行います。
グループ・スーパーヴィジョンは5-10人ほどが集まり、ひとりの人が提示したケースについてみんなで話し合います。以前は大森、高山村、オンラインとのハイブリッドで行っていましたが、最近はオンラインで行なっています。

ジェノグラム合宿
夏に年2回ほど、二泊三日の合宿を高山村で行います。家系図を描きながら自分自身の家族について掘り下げます。NHKの番組「ファミリーヒストリー」に似ているでしょうか。有名タレントでもなく、取材するわけでもありませんが、自身の家族体験を語ります。そこから新たな気づきや感動が生まれるのはNHK番組にそっくりです。自分の感情体験を客観的に向き合うことで、支援者として、さらには人としての成長を体験できます。

今年も、高山村を拠点に多方面に活動していこうと考えています。

大森相談室

 5年前に高山村に移住してから、毎月、東京大森の自宅に戻り、月に3日間だけ診療しています。
 大森の「相談室」は、私が生まれ、育った自宅です。高山村に移住する前は港区西麻布のビルのワンフロアにオフィスを借りてフルタイムで診療していました。移住したのでそこは手放し、自宅の1階を改装し診療スペースを作りました。東京へはいつも新幹線で行きます。上毛高原まで車で20分。高山村の駐車場に車を停め、新幹線で東京まで70分ですから、往復すること自体はそれほど難儀ではありません。
 しかし、高山村にも慣れ、生活のベースをすっかりこちらに移した今でももこうやって毎月東京に往復する二拠点生活を続けるのか、それとも東京での診療はやめて群馬だけにしようかなどとも考えたりします。
 高山村の生活は良いです。やることもたくさんある。週3日(月火水)は渋川市の病院で非常勤、つまりサラリーマン生活で、残りの4日は高山村です。夏は畑で野菜を作ったり、冬は薪を作り、スキーに出かけて。患者さんもそれなりに来てくれます。都内ならまだしも、こんな「田舎」で自由診療の精神科なんて。。。とも考えましたが、この近辺の群馬県内からも、また東京など首都圏から関越道を車で来てくれる人もいます。
 東京より、高山村の方が治療効果が高いように思います。都会と田舎では時間の流れが異なります。大森での診療は60分、高山村では一人90分にしています。
 移住した当初は、大森での相談は患者さんが少なくなってきたら辞めようかと思いましたが、一向に減る気配はありません。やはり都会の方がニーズは高いです。ウェブサイトを見て来てくれる人もいますが、多いのは私の知り合いからの紹介です。精神科、しかも自由診療は敷居が高いものです。サイトにいくら良いことが書いてあっても、この先生は本当に信頼できるのだろうか、優しく接してくれるのだろうか、治してくれるのだろうか、、、ということはわかりません。信頼できる人の紹介なら、信頼関係も築きやすいように思います。私のことを必要としてくれる人がいるのなら、東京での診療も続けようかなと思います。
 もう一つの要素は子ども達の存在です。大森の家はもともと私の家族と両親と、二世帯が住んでいました。今は、今年続けて結婚した長男と長女の夫婦二組が住んでいます。彼らもよく高山村に来てくれますが、大森に帰れば彼らに会えます。アラサーの彼らもまだ今後のことはわかっていません。東京にいるのか、他の場所に転居するのか、子供を作るのか自分のキャリアを優先するのか。。。もうしばらくは彼らを見守っていたい。
 そう考えれば、大森の相談室を畳んで、二拠点生活を止めるのは、私が後期高齢者になり、まだ見ぬ孫たちが中学生くらいになり、おじいちゃんの相手をしてくれなくなる頃かなぁなどと、面白くも考えます。

家族の洞窟探検

昨日の家族ミーティングは現地参加・オンライン参加を含めて6名の方々が参加してくれました。

毎回、主宰している私の印象は微妙に異なります。今回は、比喩を使えばみなさん上手に家族の深い洞窟に降りてゆけたなということです。

誰にとっても、「家族」はとてもとても大切な存在です。また、家族は両刃のつるぎです。良い方に向かえば最上の幸せになるし、悪い方向へ向かえば深い闇に落ちてゆきます。家族は閉ざされた存在です。カギを閉めて、外と遮断するから、家族は安全を保つことができます。光の部分は人に見せますが、陰の部分は外の人には見せません。自分の家族のことはわかりますが、他の家族のことはわからないんです。私は仕事がら多くの家族の中に入らせてもらっていますから、どの家族にも光と陰があることは当たり前のようにわかります。しかし、どの家族にも陰があるということは普通はわかりませんから、深い闇があるのはウチの家族だけなんだろうと、自信を失います。でも、実際はどこでもそういうものなんですよ。

陰の洞窟に降りていくのはとても嫌な作業です。自分の家族の洞窟も見たくないから蓋をします。ましてや他の家族の洞窟に降りていく機会はありません。そういう意味で、この家族ミーティングは貴重な体験です。でも、自分のことを、自分の家族のことを語るのは勇気がいります。光を語るのは楽ですが、陰を語るのはとても嫌な作業です。私が週3日診療している病院で家族ミーティングのチラシを多くの方が見てますが、参加される方はごくわずかです。参加されたたけでも、素晴らしい勇気だと思います。

これはとても大切な作業です。洞窟に降り立たないと、家族の陰をどうすることもできませんから。入るのを拒めば、薬などを使って蓋をするしかありません。それでは決して解決しないのですが、苦しいのでとりあえず蓋をします。

家族ミーティングでは何か特別なことを語っているわけではありません。家族は詰まるところ親子(タテ関係)と夫婦関係(ヨコ関係)の組み合わせです。
妻の立場から夫のことを、
夫の立場から妻のことを、
親の立場から子どものことを、
子の立場から親のことを、語っているにすぎません。
それは、何歳になっても同じです。

家族はうまくいけば大きな安心を与えてくれますが、うまくいかないと大きな不安を与えてくれます。うまく繋がれるはずの家族が、うまく繋がれないのは大きな恐怖です。
人は、動物もそうなのですが、危機(恐怖)に直面すると交感神経が優位になります。非常事態の自律神経ですね。そうなると、3Fしかないんです。
Fight)戦うか(攻撃性・暴力・虐待)
Flght)逃げるか(避ける、関わらないようにする)
Freeze)固まるか(ひきこもる、うつになる)

不安・恐怖を抱いている限り、人と人はうまく繋がることができません。
交感神経の反対が副交感神経(安心・平常心の自律神経)です。
交感神経から副交感神経にシフトして、お互い安心をベースにして繋がれば、深い幸せとレジリエンス(困難を乗り越える力)を手に入れることができます。

そのためにも、洞窟探検は大切な冒険なのです。