メールをBCCで複数の方に敢えてお送りしたのは、「選挙に立候補してね。期待してるよ!」という私の意向を投影させたくないからです。あなたの自由意思で考えてもらえたらと思います。
過去2回、私が学会長に立候補した時の文章をご紹介します。
私が立候補した理由は2つあります。 。。。(中略)。。。
多くのマスターセラピストたちが輩出し、新しい理論・技法が生まれた家族療法の創成期から半世紀たち、当学会も40歳の円熟期に入りました。若い頃は自然に備わったシステムの柔軟性を、今後もどう維持していくのか真剣に考えなければなりません。
AFTA (American Academy of Family Therapy) は1990年代前半に大きな内部変革を経験しました。それまで中心だった年配の男性たちが去り、新しい世代を中心にsocial justice というアメリカ社会の課題に向き合う学会に成長しました。一方でIFTA (International Family Therapy Association) はそのような変革を経験しないまま30年が過ぎ、創成期の活気が失われ、悪く言えば年配会員の社交クラブのようです。
当学会が今後どちらの方向に進むのか、我々の判断にかかっています。関係性を扱うことが得意な我々は、立候補者が複数出ても学会が割れるようなことはないと信じています。すでに理事を退かれた〇〇先生がよく言っていた「安心してガタガタ言い合える関係性」という言葉が思い出されます。
二つ目の理由は、私の今後のプランを皆さんに聞いて欲しいからです。 。。。(中略)。。
私は今期をもって代議員と理事から引退します。これをあえて明言するのは、「田村さんは立候補したり元気そうだから次は彼にやってもらおう。」と思われる方がいるのではと危惧するからです。若いころから家族療法に魅了され、当学会は私の職業的アイデンティティそのものです。会長になることは私にとって大変名誉なことで前回立候補しましたが、定年の年齢を超え、残念ながら賞味期限が過ぎました。
多くの支援者たちは個人中心であり、家族を支援するのは正直なところ難しいのだと思います。家族支援の必要性は感じていながら苦労している若い支援者たちに、ぜひ関係性に注目する視点を身につけてほしい。多くの人々が学会の講座で学び、認定バイザーやセラピストの資格をとり、活発な議論ができる学会に発展してほしい。そのためにも若いリーダーシップが必要です。
レイシズム、セクシズムと共にエイジズムは心にとどめるべき重要な視点です。通常は高齢者に対する差別を指しますが、年功序列を好む社会では逆の意味での差別もあります。年長者の視点からすると年少者は元教え子だったりスーパーヴァイジーだったりのイメージが保持されて、「若い彼はまだまだ、、、」と思い込みがちですが、決してそんなことはありません。年長者は次の世代にチャンスを与え、自身が凌駕されることを受け入れなればなりません。年少者は年長者の意向を忖度することなく自由に活躍していただきたいと思います。
我が国の医療システムは長きにわたり医師によるリーダーシップに慣らされてきました。当学会は幸い心理、看護、福祉、教育、司法など多職種の自由な交流が強みです。しかし、歴代会長の多くは医師です。
また歴代会長はすべて男性です。「家族」を扱う学会の長が男性ばかりというのはどう考えてもジェンダーバランスが悪すぎます。学会が柔軟に活性化するためにも女性のリーダーシップがぜひとも必要です。
このような視点からすると、高齢者で、男性で、しかも医師である私は、昭和の時代なら会長にふさわしいのかもしれませんが、いまの時代、最もふさわしくありません。
同じ視点を共有する先生方と交流できる学会執行部を去るのは、私にとって居場所を失う喪失体験であり辛いのですが、定員のある座席は次の人たちに譲らなければなりません。しかし学会活動からは引退しません。一般会員として、また認定スーパーヴァイザーとしては今後も学会を盛り上げていきたいと思います。
凝集性の高いシステムで、お互いの気心が知れないと大きな不安を生みます。意欲はあっても、席が空いているのか忖度する新人もいるのではないかと思います。ある村では村議会改選にあたり次期不出馬議員の意向を早めに明らかにしたそうです。とても参考になる取り組みだと思いました。
https://www.yomiuri.co.jp/election/local/20221217-OYT1T50090
以上が2年前の文章です。今、さらに付け加えると、今回の選挙では今までの人たちの多くが引退して世代交代が予想されています。賞味期限が切れた、形骸化した学会ではなく、時代のニーズに合った、若い人たちが積極的に参加できる活気のある学会であるためにも、年配の男性中心の執行部ではなく、女性が活躍し、(臨床経験10年+くらいの)若い人たちに学会のかじ取りを担ってもらいたいと思います。どうぞ考えてみてください。